A DAY OF THE SURVIVAL MOUNTAIN〜恐怖の強化トレーニング〜 (2) |
「随分クラブから離れてるんだな。このコート。」 「それに何かボロいね。」 クラブハウスから5分弱で着くこのコート。周りは普通の森。サーフェスもクレーでAコートとはえらい違い。 「ではこれからシングルスのポイントマッチを行う。2ポイント連取した方の勝ちだ。」 「何か普通だね♪」 「地獄の特訓なんて言うからどんなかと思ってたけど。」 「しかし今日はそれだけじゃない。」 乾が持っていたボールを地面に置くと、何と自然に転がり始めた。 「わ〜おもしろーい。」 「ふーしぎー。」 「通常のコートではまずないこの地形を有効活用した一種の筋トレだ。 この傾斜を利用して下側の者は前につめる際にかけあがり、逆に上側の者は後方に下がる際に 後ろ向きのまま坂を登らなければならない。名づけてマウンテンライド。」 「何か奥が深そうな練習だなぁ…。」 乾の説明を聞いてもしっかり記録を取っている。 「当然ベースラインプレーヤーは斜面の下に、ネットプレーヤーは斜面の上に配置する。 オールラウンダーは移動の際のバランス感覚を養うのが目的だ。」 「へー。おもしろそうじゃん。」 「乾ー私もやりたい!」 「それから練習中水道の使用は禁止。もちろんの作ったドリンクもだ。 飲みたい者は下の小川まで下りて戻ってくること。」 「小川?」 「そんなのあったっけ?」 「…何か微かに水の音が聞こえるような…。」 「「「「小川ってどこだよ!」」」」 小川に行くまでに疲れそうなぐらい小川は下にあったのだった。 「そして負けた者には当然ここに用意してあるマーベラスサプライズ乾汁エクセレントを飲んでもらうから。」 そういうと乾はどでかいタンクを目の前に出した。 「「「タ…タンク!?」」」 「意地でも負けらんねぇ。」 「ふしゅ〜…まさに地獄だ…。」 「…どーりで荷物が多かったわけだ。」 「どうするんだ?対戦表には入ってないが…今からでも…」 「やっぱりやんなくていい!!おとなしくスコア表書いてるよ。」 「あーずるいー!」 は何とかマネージャーの特権で乾汁は飲まなくてすみそう。 ホッとしたのもつかの間、すぐに河村対越前の第1試合が始まった。 「本気でいきますよ。河村先輩。」 「上等だ!このスィートリトルボーイ!オラオラカモーン!」 リョーマは最初から右でラケットを持っている。 「タカさんと越前の試合か。楽しみな一戦だね。」 「そうだね〜。2人ともがんばって〜!」 リョーマはいつも通りにツイストサーブを打ったが… 「あれ?顔面に飛んでこない。オイオイ。」 「どういう事だ?」 「こりゃキツイぞ。」 「お互い何とか返してるって感じじゃん。」 「おりゃ!」 河村の打ったボールは残念ながらアウト。 「オー!ノーサンキュー。」 「何か今のボール変だった…あれってツイストじゃないのかな?」 「いや、そうじゃない。越前のツイストサーブは完璧だった。」 「ん?じゃあ何であんなんなったの?」 「このコートの地形による斜面で角度がついたんだ。」 「へ〜。じゃあリョーマ不利になっちゃうね〜。」 そのリョーマはグリップを見つめまたツイストサーブを打った。 「あ、また変になった!」 「同じ手はくわん!」 が、河村は滑ってロブがあがった。リョーマのチャンスボール!と思いきや…。 「え!?」 「どわあぁ〜。」 ドッシーン 河村が勢い余ってリョーマの方にネットごと転がってしまった。 「ありゃりゃ…2人ともだいじょーぶー?」 「タカさん網にかかった魚みたいだ(笑)」 「さっすが寿司屋のせがれ〜。」 「越前だいじょうぶか?」 「ウィース。」 コポコポコポ。何やら怪しい音と怪しい影が…。 「ドローだ。」 「「え?」」 リョーマと河村が後ろを向くと…恐ろしい色をした液体を持った乾が逆光で立っていた… 「「うわあ!!」」 「俺達生きて帰れるかな?」 「帰れないかもしれないっス。」 「あぁ…その辺微妙だな。」 「たく、あんな汁飲ませやがって…。」 「もう飲みたくねぇな飲みたくねぇよ…。」 「ふしゅしゅ〜〜。」 「皆だいじょぶ?」 「助けて〜。」 「助けたいのもやまやまなんだけどね〜。」 私も乾汁ヤダから…と苦笑する。 「とりあえず1セット終了。ちなみに午前の部はこの後9セットやってもらうから。」 「「「「「「えー!!」」」」」」 そして午前の部はレギュラー陣の叫び声が絶えることはなかった…。 午後、Aコートに戻ってみるとまたあの佐々部が森岡を困らせていた。 「だって先程は午後から空けてくれるって…。」 「だから気が変わったんだよ。」 「ですがせっかく遠くから来てくれたんですし…。」 「そんなに言うんならアンタが土下座しろよ。」 「かわいそうじゃん佐々部ー。」 「佐々部…。」 リョーマは佐々部という名前に聞き覚えがあるらしくじっと見ている。 「何アイツ!超ムカツクー。私が行って…。」 「…はここで大人しくしててね♪(ニッコリ)」 「うっ…だって〜。」 「だいじょうぶだよ。ほら。」 不二が指差した先にはリョーマがコートに入り佐々部達の目の前に立っている所だった。 「こりない一家だね。」 「あ?」 「どーりで似てると思ったけど。」 「やっぱりお前か。親父と弟が世話んなったみたいだな、ガキ。」 「ねぇ試してみる?どっちがこのコートを使う権利があるか。」 「へっ上等だ。目黒の人形使いと言われたこのオレと勝負するとは。オレは親父と弟みたいにはいかないぜ。」 双方が睨み合っていると手塚がコートに入りリョーマの隣に立った。 「部長…。」 「大学生の皆さんの胸を借りたいと思います。行ってこい越前。」 「ウィース。」 リョーマは手塚の許可も下りて佐々部と試合する事になった。 「バカが。相手になると思ってんのか?」 「バカはお前だ!バーカ!!」 「ちゃん、相手に聞こえるよ。」 そう言われてもなお大学生に見えるようにあっかんべーをする。 「負けんなよーおチビー!」 「越前のやつだいじょぶなのか?」 こうして因縁の佐々部家VSリョーマの対決の第3ラウンドが幕を開けた。 BACK NEXT |