マムシVSニセマムシ


「すっごいギャラリー…。」

キャーキャーと黄色い声があがる城成湘南を見てが呆れてつぶやく。

「早速だけど君の相手を決めなくちゃね。」

「俺の相手だと?」

若人の変な発言に海堂は相手である若人を強く睨みつけた。

「んーそうだなぁ…君にピッタリのプレーヤーは…。」

顎に手を当てながら帽子を取り出し上に投げた。そして合図である指を鳴らす。

「チェーンジ!」

「「オーバー!!」」

若人の掛け声にギャラリーの若人弘親衛隊が答える。

「指パッチンだ…。景吾と一緒…?」

「何か急に目付きが変わったっスね。」

「チェンジオーバーか…。転換するって意味だな。」

「おもしろい事になりそうだね♪(ニッコリ)」

『1セットマッチ青学海堂トゥサーブ!!』

リターンをするために構える若人。その体勢はかなり低い。

「あ!」

「あ!」

「?」

周りが若人のプレーを訝し気に見ていると若人がポイントを決めた。

『0−15』

「カモーン!!」

大きくガッツポーズをする若人。それはまるでレイトンヒューイットのように…。

「フーン…。」

「ほーんとクセまでくりそつだね。」

「いや…あれはマネなんてもんじゃない…。テイクバックの大きいフォアハンド、ダブルハンドによるバックハンド、
そしてどんな球にでもくらいついていく脚力。まさにストローカーのヒューイットそのものだ。」

「そのものって…。」

「本当に実力がなければあぁいうプレーはできないって事さ。」

「フーン…物マネね…。」

「マネッコね〜…。氷帝の樺地みたい。あれ?さっきは景吾の指パッチン?」

は1人変な方向から試合を見ていた。
そして若人のプリテンダー戦法はまだレパートリーがある。

サーブ&ボレーが得意なピート・サンプラス、リターンの天才アンドレ・アガシ、
左利きのサーブ&ボレーヤーゴラン・イワニセビッチ。
海堂も必死にくらいつくが4−2とリードされてしまう。

「さてと次は…。」

不適な笑みを浮かべて若人が変身したのはグスタボ・クエルテン。

「(さっきのサウスポーもダンクスマッシュも俺の体が覚えていやがる!)」

『15−0!!』

「ヤッタ!1ポイント先取!」

「テメーの技術は一流だ。でもな、俺は同じ様な技をもっと強烈に磨いた奴らを知ってんだよ。」

「っ!?」





ここから粘りの海堂の本領発揮。ついに6−5と逆転した。

「いやー恐れ入ったな。だけど今…君を倒すのにふさわしい究極の相手が決まったよ。」

お決まりのセリフと共に若人が変身した究極の相手とは…。

「!?」

「お!?」

「あれって…薫ちゃん!?」

「マムシが2人いる…。」

スネイクまで完璧にマネしてくる若人にレギュラー陣は驚きを隠せない。

「海堂と同じプレイができるなんて…。」

「考えたね…自分自身と戦った人間はいない。経験はすべて無意味になる…。」





「どーだ?自分の技にやられる気分は。」

『ゲーム若人!6−6!12ポインツタイブレーク!』

「すごいな…。」

「ちょっと乾〜。」

感心したような乾の声には乾のジャージをグイッと引っ張る。

「あーひょっとしてラケットの高さがミリ単位であってるとか?」

「バカ言うな。センチ単位でズレてるさ。」

「ホッ。」

「そんなのあったり前じゃん。英二心配しすぎー。」

には言われたくないしー。」

英二はちょっと唇を尖らせ、拗ねた口調で言った。

「すごいのは筋肉の使い方だ。普通のプレーヤーにあの打ち方は
まずムリなんだ。だがあいつは不完全ながらコピーしてきている。」

「へ〜…でもさ、世界の有名プレーヤーばっかやってた若人にマネされるなんてちょっと光栄じゃん?」

「バカだねー英二は。」

がそう言って英二を海堂の方に向かせた。

「うわぁ!超フキゲン!!」

「かなりキてるっスね。海堂先輩。」

「そりゃそーだろ。自分の技をマネされてあのバカマムシが黙ってる…うっ…。」

「こら、桃!ちゃんと休んでなさい!」

応援している所へ来た桃をが支えて日陰につれていった。

「海堂を怒らせるにはもってこいの技術だな。お手並拝見。」

海堂をマネしているせいかダイビングする若人に女子の
黄色い悲鳴が飛ぶ。そして…若人は海堂の口癖までマネしてきた。

「お見事。」

「海堂の一番嫌がりそうな所突いてくるね。」

「でも…あんま怒らせたら…。」

「噛まれるかもね。」

「マムシの牙に。」

「危ねーなぁ、危ねーよ。」

ラリーの応酬が続く中、ついにあの技が作動する。

「いっけー!ブーメランスネイク!!」

「「ほーら。噛まれた。」」

リョーマと不二が楽しそうな声でハモった。

『2−1青学海堂リード!!』

だが若人はまだ諦めちゃいない。またスネイクVSスネイクのラリー。

「このままじゃヤバイぞ。海堂。」

「いや、そーでもないっスよ。」

「越前も気づいたのか。」

「え?」

大石がわかっていない様子で乾の方を見た。

「すごいのは海堂の方さ。」

「あ!わかった。あれってランキング戦の時にリョーマが薫ちゃんにやった…。」

「しかも海堂はそれをスネイクでやっている。」

「仕掛けられた方はたまったもんじゃないね。そろそろ落ちるよ…彼。」

「海堂にマネされてるぞ、越前。」

「チェンジオーバー?光栄っスね。」

だが若人もこのままで終わる男ではない。まだマネする気だ。あの技までも…。

「あ!」

「まさか…。」

「ブーメランスネイク!?」

『アウト!4−2青学海堂リード!』

「すごいね。もう少しで入りそうだよ。」

「しかしあれじゃ入らないな。」

「え、どーして?」

「あの振り抜きではまずムリだ。体を沈めて腕を振り上げただけではスネイクは打ててもブーメランは打てない。
ブーメランは鍛え上げられた腕の振りと手首の強さが不可欠だ。それがなければ本物のブーメランは打てやしない。」

「なるほど…日々の努力がなければ打てない技か。海堂らしいね。」

そしてその後も海堂がポイントを取り続け…。

『ゲーム&マッチ!青学海堂!7−6』

「ヤッターー!勝った勝ったー!」

意地と努力がぶつかった試合だったが、今回は海堂に軍配が上がった。





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