冷静と情熱の戦い


『城成湘南中学VS青春学園の試合を始めます。D2前へ。』

「乾先輩、あいつら双子のペアっスよね?」

「あぁ。」

「ペアじゃないんだよ、俺達。」

桃と乾の会話に双子の片割れ浩平が割り込む。

「「ユニット」」

「と呼んでもらいたいねぇ。」

「ユニットだぁ!?ペアはペアだろーが!!」

桃は試合が始まる前から熱くなっている。

「ユニットだから将来デビューできそうだね。」

……ナイスボケ。」





『1セットマッチ青学桃城トゥサーブ』

「あいつら…僕たちのコンビネーションについてこれるのか?」

「バーカ。ついてこれるわけないよ。」

「っなんだと!?」

「やめろ桃城。試合中だぞ。」

「……わかってますよ。」

ユニットの挑発に熱くなる桃はことごとくユニットにポイントを許してしまう。

『ゲーム城成湘南1−0』

「もう1ゲーム取られちゃった…。」

「それにしても向こうのペアの反応が早いな…。」

「あ…。」

試合を静かに見ていたリョーマが小さく声をあげる。

「あのペア、桃先輩だけを狙ってきた。」

「越前の言う通りだ。あのペアわざと乾のいる所を避けてきている。」

「ダブルスに不慣れな桃はそれに気づいていない。」

「桃…。」

ユニットが挑発して上げたチャンスボールに桃は迷わずダンクスマッシュの体制に入る。

「やめろ桃城!下がれ!」

「もー遅いっスよ!」

…が、既にユニットはベースライン上。

「「デュオユニゾーン!」」

「あ!」

ユニットがラケットを重ね、軽々と桃のダンクを返してしまう。

「桃城、熱くなるな。力任せに打ったからって決まるモンじゃない。」

「ちょ…ちょっと乾先輩!」

「やっぱり桃がいつもの力を出しきれてない。」

が金網をギュッと握りポツリと呟いた。

ちゃんの言う通りだ。冷静さを失いすべてにおいて狂いが生じている。」

「早くいつもの桃に戻ってよ…桃〜。」

試合はその後も相手ペース。あっという間に0−4とリードを許す。

「それにしても乾先輩も冷たいよな。もっとフォローに回ってあげればいいのに。」

「でもフォローに回ったらフォーメーションが崩れてますますやられちゃう
じゃないか。まったくいつもテニス歴2年って自慢してるくせに。」

「わかってるよ!初心者のくせに知った風な事言うなよ!」

横で見ていた堀尾がカツオをどんっと押し、2人まで喧嘩を始めてしまう。

「何すんだよ堀尾くん!」

「何すんだも何もないんだよ!」

「2人ともやめなさい。試合中よ!」

「落ち着いてよ2人ともー!」

「落ち着けって言われたって落ち着けるかー!」

「もー。それじゃ今の桃と一緒じゃない。」

「っ……同じ?俺と…同じ?」

2人を止めるの言葉を聞いて桃がハッとなる。

「乾先輩。どーもすいませんでした!俺危うく1人相撲取るとこでした。
でももう大丈夫っス!ここから本気で試合開始っスよ!」

「あぁ、桃城。俺達のダブルスを見せてやろう。」

「何?どういうこと?」

「どーなっちゃったの?」

「ま、見てよーじゃないか。」

「そうそう。こっから2人の本領発揮だよ。」

「「???」」

ケンカしていた張本人たちはわけがわからず首を傾げる。





「どりゃあ!!」

「計算通りだ。」

いつもの桃のパワーと乾のデータで流れは青学に傾いてきた。

『ゲーム青学3−4!』

「よく立ち直ったな。この調子で逆転だよ。」

「「はい!!」」

「桃先輩。やっとダブルスらしくなってきましたね。」

「う…うるせぇ!……おい、堀尾!カツオ!」

「「はい?」」

「お前たちのお陰で冷静になれたぜ。サンキューな。」

「桃!この調子でファイト!!」

「はい!」





試合は完全に流れが変わり5−4とついに逆転した。

「ふー…あと1ゲームっスね。」

ベンチに置いてあったボトルのドリンクを飲む桃。

「あ、それは…。」

「へっ?………あ…。」

目の前がぐにゃりと歪んだように見えた桃はそのままぱたりと倒れてしまった。

「おい!桃城!?」

「桃ー!!」







『青学棄権により、勝者城成湘南!!』







「桃〜だいじょうぶ?」

「はい…なんとか…。」

担架で運ばれた桃を看病する

「でも悔しいっス…こんな形で負けるなんて…。」

「その悔しさをバネに今度ダブルスやったら勝てばいいんだよ。」

が優しげにニッコリと微笑むと桃も青い顔をしながらもつられて笑う。



「何あのいい雰囲気を醸し出してる2人は…(黒オーラ)」

「桃の奴ズルイー!」

「それもこれも乾先輩の変な汁のせいっスよ。」

「へ…変な汁…。」

丹精こめて作った野菜汁を変な汁呼ばわりされてかなり凹む乾だった。





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