第62話 選択の時


「お待たせ!」
「おチビが帰ってきたー!」
「スマンな、真田。」
「礼には及ばんよ。」

ライバル達とのラリーを終えたリョーマは記憶を取り戻し決勝戦S1のコートへ戻ってきた。

「リョーマお帰り。」
先輩。」
「…見てるよ。ちゃんとリョーマ見てるから絶対勝ってきて。」
「もち。」

の手にハイタッチをしてリョーマは余裕の笑みを浮かべている神の子幸村の前に立つ。

そして最後の試合開始のコールがかかった。



試合は幸村優勢で進んでいった。
試合を見ている誰もが幸村の勝利だと思っていた。



青学レギュラー以外は。



そしてまたもリョーマの勝利を信じていた。
だが、の目には不思議な光景が広がっていた。
リョーマと幸村の試合を見ているのだが、白いもやがかかったような景色。
そして動きの1つ1つがコマ割りされたかのように試合が進んでいく。



「何…これ。」

周りには確かに皆がいる。レギュラーがいる。
遠くの席には今まで戦ったライバル達もいる。

「周助?…手塚?大石、乾…英二?タカさん…桃…薫ちゃーん…。」

名前を呼んでも反応がない。
確かに隣にいるのに。

自分だけが周りから切り離されているような感覚がしている。



『ゲームセット!ウォンバイ越前6−4!』



「やったーやったー!おチビが勝ったー!」
「リョーマが勝った!青学優勝だ!」

はリョーマに駆け寄ろうとするも目の前は白いもやがかかってリョーマに近づけない。

「リョーマー!」

が叫んでも声が届かない。





目の前が真っ白になった。





真っ白になった瞬間目の前から自分を呼ぶ声が聞こえた。





ちゃん!ちゃん。」



「…懐かしい声…でも…誰?」



今度は後ろから自分を呼ぶ声…



ー!」
先輩!」



「皆が呼んでる…!」



はその声を頼りに走り出した。





懐かしい声のする前へ   皆の呼ぶ後ろへ