最後の幕開け


「…やっぱり無理があると思うんだけど…。」
先輩からも言って下さいよー!」

目の前には白い帽子と短パンをはき、のジャージを着ている・・・見た目はリョーマに見えなくもない堀尾。

「私もそうしたいのは山々なんだけど…ほら、リョーマが帰って来るまでの辛抱!」
せんぱ〜い・・・」

レギュラーがコートに並んで挨拶をする。
もちろん立海が堀尾に気づいていないわけもないが…
互いに相手に勝つ。それだけが今日ここに立つ意味。

「…これで最後なんだ…。」

がポツリとつぶやいた言葉に隣にいた河村が苦笑して言葉を返す。

「どうしたの?ちゃん。これから始まるんだよ?」
「あ、そうだよね…。そっか。ここからが始まりか…何かすごく最後だなって思っちゃって。」
「うん。わかるよ。中学最後の試合だもんね。」





「越前は電車のトラブルで帰ってこられないらしい!」
「お前がいなくてどうするんだよ…俺探しに行ってきます!」

今回の試合メンバーではない桃が一目散に走り出す。

「あ、おい桃!探すってどうやって…!」
「待って大石。私が行ってくる。」
「え、ちゃん、でも…。」

がいてくれた方が部員の士気は上がる。もちろん自分も。
はそう言いたげな大石に向かっていつもの笑顔でニッコリ笑う。

「桃に絶対探して来てねって言ってくるから。」
「…わかった。桃の奴もどこ探していいかわからないはずだから落ち着けって言っておいて。」
「うん。すぐ戻ってくるから待っててね。」

桃の行った方向にも走って行くと、桃の姿はすぐに見つかった。

「ちょっと桃!」
「あ、先輩。」
じゃねーか。」
「…あれ?景吾?」

桃と一緒にいたのは氷帝の跡部と忍足。
何でこのメンバーでいるのかとは疑問を持って首を傾げる。

先輩、何か跡部さんがヘリ出してくれるとか何とか…。」
「はい?!ヘリってヘリコプター!?何で…。」
「軽井沢まで乗っってった方が早いだろ?」
「景吾…。」

何日か前は敵同士だった。だが終わってしまえばライバルという名の友。
は跡部に飛びついてぎゅっと抱き着く。

「ありがと景吾。」
「ばーか。あのチビが戻ってきてから言えよ。ついでにキスしてくれてもいいぜ?」
「ちょっ!跡部さん!」
「…っていうか何で俺も行かなあかんねん。」
「ナビゲーターは必要だろ?行くぜ。」
「はい!」
「あ、桃!」

跡部から離れ、は桃の顔を見て言葉に詰まって顔を伏せる。
間に合う保証はない。だけど、リョーマがいない優勝は考えられないのも事実。

「…桃。お願いね?」
「はい!」

そう頷いた桃は笑顔だった。だから大丈夫。
はヘリポートまで走っていく3人を見届けてからコートに戻って行った。



「あ、。どーだった?」
「うん。景吾と侑士がヘリコプターで桃連れて軽井沢行ってくれた。」
「は?!」

思わず大きな声を上げた英二は試合が始まっていた事を思い出し、思わず手のひらで自分の口を隠す。

「…でも何で跡べー?」
「わかんない。だけど…昨日の敵は今日の友ってやつ?」
「それは絶対ないと思う。」

即否定した英二に周りのレギュラーも同意するかのように頷く。

「だから大丈夫。リョーマの事は桃に任せて、皆は勝つことだけ考えて。」
「「「「「もちろん!」」」」」

S3は手塚VS真田。
二人が出てきた瞬間空気が変わっていた。それは試合が進行しても変わらない。

「…ちゃんアイシングの準備を。」
「…クーラーボックスの中に入ってるから。」

手塚ファントムを打ち続けて手塚の肘は限界にきている。
だけどには止められない。今まで何回もギリギリの試合を見た。
止めようと思っても皆止まってくれなかった。



勝つために。



「ゲームセット!ウォンバイ真田!7−5!」
「…手塚部長が負けた…?!」
「桃!桃が戻って来た!」
「おチビもだ!」
「おせーよ越前!」
「いや、あの…。」

桃の後ろにいる越前はいつもと様子が違う。キョロキョロと不安そうに周りを見ている。

「…リョーマ?どうしたの?」
「あの…皆さんここで何してるんですか?」
「え?」
「越前の奴…記憶なくしたらしいんス…」
「「「「「記憶喪失?!」」」」」





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