第51章 千葉房総湯けむり事件簿


「え、この合宿所ってお風呂ないの?」

「だから地元に湧いてる温泉入りに行くんだぜ。」

ちゃん先に行っておいで。俺たち片付けてから行くから。」

「うん。ありがと。」

佐伯に地図を渡されて早速お風呂の準備をしていざ参る…はずですが…



「…あれ?ここドコ…?」

は地図を読めない事で有名な子です。(青学レギュラー陣の中では)

「あ!発見発見!ここかぁ〜…。」

無料でやっている所なのか番台さんもいなく、運よくお客もいません。

「やった〜温泉独り占め♪早く入ろ〜vv」

ウキウキしながら服を脱ぎ、いそいそと温泉につかる





「へぇ〜。ここら辺に温泉なんて湧いてるんだ。」

「温泉なんて久しぶりだな。」

「…で、先輩は一緒じゃないんスか?」

「何、おチビ一緒に入るつもりだったわけ!?」

こちらは男性軍団。夕飯の片付けの後お風呂へ向かいます。

「残念だけど、ちゃんには俺たちと別の場所教えてあるから。」

「ふーん…。」

もちろん…がちゃんとその場所に着いているかどうかは定かではないです。





「1人だから泳ぐ事もできちゃうんだ〜♪」

が1人でふわふわ泳いでいると…どこからか聞きなれた声が…。

「へー結構近いんじゃん。」

「ここは地元の人しか知らない穴場なんですよー。」

「…ん?何か聞いた事ある声…。」

が外の道に近い岩の方まで行くと…より声は大きく聞こえてきます。

は別の所なんだっけ?」

「ここいちお混浴だからさ。」

「えー!なのには別の所なわけ!?」

「英二、当たり前だろう…ちゃんだって…。」

レギュラー陣の声が聞こえてきたと共に…脱衣所の方も騒がしくなります。

「え…ちょっと待って…私…ここにいるんだけど…。…ん?」

段々と騒がしくなる脱衣所に反比例しては段々静かになっていきます。

「…まさか私…地図読み違えて別の温泉に来ちゃったとか…?」

えぇ、そのまさかなんですが…。



ガラガラガラ!



「!」

脱衣所のドアが開く音がしたのではサッと死角である岩陰に隠れます。

「おー!広いじゃん!」

「すっげー!温泉だ!」

「今日は僕たちだけの貸切なんですよ。」

「って事は騒いでもOKじゃん!」

「でもご近所の人に迷惑だぞ。」

は岩陰に身を隠しながら頭の中でぐるぐる考えています。

「(…ヤバい…どうしよう…でもこっから出れないし…。)」

「桃!向こうの岩まで競争しよ!」

「臨む所っスよ!」

「(ちょっと待ってー!)」

「英二、桃!いちお風呂なんだから…。」

「(大石ナイスー!)」

男の子達より長く入っているはそろそろ…逆上せてきたようです。

「(うー…どうしよ…。そろそろ上がりたいよー…熱いのに…)」

「?」

カンのいい佐伯が岩陰の周りの温泉の揺れを見て寄ってきます。

「(わ、ちょっと…誰か来る…)」

「…まさか…ちゃん?」

「…佐伯くん?」

他の人にバレないように小声で話しかけてくる佐伯。

「…ちゃん、地図の通りに来なかったの?」

「…来たらここに着いたんだもん…でももうそろそろ限界…。」

「え!?…わかった。何とかするよ。名前借りるね。」

「え?」

佐伯はそういうと…脱衣所に一旦出てすぐに戻ってきて言った。

「大変だ!ちゃんがのぼせてフラフラになったらしい。」

「「「「「「「何だって!?」」」」」」」

体を洗っていた人も温泉に浸かっていた人も…ダダダっと行ってしまいました。

「…本当に誰もいない?」

がちょこっと岩の上から顔を出すと…見事に全員いなくなっています。

「…まぁ…でもこのままいても強ち嘘じゃなくなっちゃうし…。」

こうして…佐伯の機転ではちゃんとお風呂に入る事ができたのでした。





〜オマケ〜

その頃青学と六角のレギュラー陣は?

「あれ?は?」

「佐伯、どういう事かな?(ニッコリ)」

「おかしいな…オジイから電話が来てたんだけど。」

「あの人電話なんてできるんスか?」

「電話ぐらいできるんじゃねぇの?」

「バネさんオジイから電話受け取った事あるんじゃなかったっけ?」

「いいや。ダビデだろ?」

「剣太郎は?」

「僕は1回も…って、サエさん?」

剣太郎がサエを見ると…楽しそうにニコニコ笑っている。

「えー!結局俺ら騙されたわけ?!」

「風呂もまともに入れなかったじゃないスか!」

「佐伯、ちゃんと理由を説明してくれるかな?」

「帰ってからちゃんに聞いてみたら?」

「「「…。」」」

もちろん帰ってからはお礼をするために佐伯の所へ一直線。
理由を問いただしても顔を赤くするだけで話してくれなかったのでした。





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