第44章 プライドをかけた戦い |
「シクヨロ!せっかくだから俺の天才的妙技たっぷり見て帰れよ。」 パチッとウインクして丸井が桃城たちを挑発する。 「ところで悪いんスけど・・・二人共その両腕の重り外して貰えませんかね?」 負けじとくせ者桃が挑発し返す。 「外させてみろい。」 そんな挑発をもろともせず王者立海は余裕の表情だ。 『ザ・ベスト・オブ・1セットマッチ立海サービスプレイ!!』 「おい海堂・・・・・・。」 「ああ。」 「ファイヤーーーッ!!」 強烈なサーブをジャッカルが打ってきたかと思えば桃はジャックナイフで返す。 「(この試合の主導権を握るには・・・奇襲だ!)」 「ジャックナイフかよ!?」 「ったく避けんな!」 前衛のボールも守備範囲の広いジャッカルは軽々と返す。 「(奇襲を成功させる!その為には・・・・。)」 「あ!桃がポーチに出た!」 だが、狙ったように左はガラ開き。もちろん丸井はボレーで狙った。 「(よし・・・ブチかましてられ!!海堂!!)」 「ジャックナイフによるポーチは・・・。」 「海堂にブーメランスネイクを打たせるための布石か!」 「あ、でもネットに当たった!」 丸井の打ったボールがネットに当たり・・・信じられない光景が現れた。 「ボールが・・・ネットをつたって・・・。」 「綱渡り・・・どう天才的?」 丸井は桃を指さし不敵に笑った。 「ダメだ!あの前衛にボールを触らせたら・・・。」 「これももらった!・・・妙技鉄柱当て。」 軽く打ったボレーがポールに当たって桃の足元に転がった・・・。 「ビンゴvv」 『ゲーム立海3−0!!』 「あ〜・・・3ゲーム連取か・・・。」 「奇襲に失敗し完全に主導権を握られてしまったな。」 「精神的ショックも大きい。そして、それが焦りに繋がる・・・・・・。」 「くそーっ・・・あん時ブーメランスネイクさえ決まれば・・・・。」 悔しがる3人トリオをチラッと見て丸井はニヤッと笑った。 「何?そんなのあんだ。じゃあそれ打たせてやるよ。」 「!」 「ただしキッチリ返すぜ・・・。」 「・・・・・・・・・!」 「ジャッカルが!」 「おい、オレかよっ!」 この時海堂にはブーメランを打つという考えしか頭になかった。 「さあ打って来い!」 「なっ!?マジでコーナーに・・・確かにブーメランじゃ真ん中からじゃ・・・。」 桃はふと冷静に考えてみる。何かが・・・何かが引っかかる。 なぜ相手はブーメランがあの位置からじゃないと打てない事を知ってる? 最初の奇襲は失敗した・・・だからまだ見たことはないはずなのに・・・。 「やめろ海堂打つなっ!!」 「海堂くんのポール回しが入る確率・・・92%」 「!」 立海の参謀柳がそう呟いたかと思うと・・・ジャッカルが・・・そっくりそのまま返した。 「あ・・・ブーメランスネイク・・・なんで・・・・。」 「蓮二か・・・。思った通りだ・・・立海は我々青学の各個人の情報をしっかり把握している。 彼らには驕りも油断もない・・・だからこの16年間関東でも負け知らずなんだ。」 「いかに精神力の強い海堂とはいえ、自分の培ってきたテニス人生を根底から 覆されてしまった・・・もう冷静にプレーするのは不可能だろう・・・。」 「これが全国レベルのテニスだよ・・・。」 大石の言う通り、海堂の動きが途端に悪くなってしまった。だが・・・。 「でも・・・ほら!桃がいる!桃が頑張ってる!」 「桃城は海堂の辛さを一番知ってるんだ。ライバルだからこそ・・・。」 海堂の分まで桃が走り必死に海堂をカバーする・・・ライバルとして・・・・ペアとして・・・。 「(辛えよな海堂!だが・・・)テメーで這い上がってこい!!待ってっからよ!」 「・・・・桃城・・・。」 「ダブルスはな・・・・・・・・・」 「二人でやるもんだろ!」 そして、また丸井の鉄柱当て。先ほどと違うのは・・・ボールが後ろへ行く事。 「桃城!?」 ライン際に落ちたボールに桃はスライディングして取ろうとするが後一歩。 『ゲーム立海5−0!!』 「桃!!」 「でもほら、先輩。桃先輩たち・・・らしくなって来たじゃん。」 桃の作戦でネットにつかされた海堂。何をするかと思えば・・・ショートスネイクで 攻撃専門の丸井の動きを封じ、守備専門のジャッカルと勝負している。 「よっしゃー!行け行けー!」 「・・・だから女の子がよっしゃーなんて言っちゃダメだってば・・・。」 「もうその重り外したらどースか?」 「だーから外してみせろって。」 立海はまだまだ余裕。1ゲーム奪われても何も気にしていない。 そして・・・ついに立海側のマッチポイントを迎える。 「なっ!?海堂の奴ブーメランスネイクの軌道を逆にしやがった!!」 「テメーら底なしかよ!?」 何とかジャッカルが返すも・・・そこには相棒を信じて待った一人の男が跳ぶ。 「桃城ーーーーーっ!?」 桃のダンクスマッシュが決まった・・・と、誰もがその時思っただろう・・・。 だが・・・今まで攻める事しかしなかった男が一つの選択をした。 「(このポイントで決めなきゃイヤな予感がするぜ!!)」 ブン太が当てただけのボールは向かい風の力を借りてライン際に落ちる・・・。 「やっほぉい天才的だろい!!」 「「うおおおおおおお!!」」 海堂と桃は必死に向かって二人同時に打つ・・・そのボールは・・・虚しくネットにかかった。 そして丸井とジャッカルはその腕にはめていたパワーリストを静かに外した・・・・。 『ゲームセットウォンバイ立海6−1!!』 プライドが激しくぶつかり合った試合・・・軍配は立海に上がるも、桃と海堂のプライドは守られた・・・ BACK NEXT |