第32章 決着の時 |
「早目には・・・・決められないんだよね・・・。」 「跡部はそんなに甘い男じゃないからね。彼も全国区だし。」 「あせれば必ずスキが生じる。奴はそれを見逃さない!」 「・・・・手塚〜〜頑張れ〜〜〜・・・・。」 2人のラリーは最初から衰える事なく一進一退の攻防を続ける。 「(流石だぜ手塚。一球ごとにお前のショットは俺を追いつめてくるだが・・・ そろそろ強引にでも焦って攻めて来いよ手塚!・・・・・・・・・・コ・・コイツ・・!?)」 跡部はニヤリと笑ったが、手塚の顔を見て表情は一変した。 「手塚は・・・・あえて持久戦に挑む覚悟だ!」 「えっ!?大石!?」 「手塚は、自分の腕よりも部長として青学の勝利を選んだんだ。」 「え・・・じゃあ手塚の腕が・・・・。」 は心配そうに手塚を見るが、手塚は腕を痛めているとは思えないプレイをする。 「ちっ手塚ぁーー!!」 『ゲーム6−5青学リード!!』 「バカな・・・あえて持久戦を挑んできやがるとは・・・。」 「さあ、油断せず行こう。」 試合開始からゆうに1時間半はすぎている。それでもこの熱気はやんでいない。 「(跡部・・・悪いが全国へ行かせてもらうぞ!)はっ!!」 「(何故だ!?キサマの肩はもう限界を超えているハズだ!)ちっ!!」 跡部が返したボールをドロップショットで返す手塚。 「零式ドロップ!!(こいつ・・・不死身かーーっ!)」 「手塚ぁ〜・・・ムリしないでよ〜〜。」 「青学青学!!」 「氷帝氷帝!!」 「(奴を見ろ!球を見ろ!全身の毛穴をブチ開けろよ!!)」 「そうだ跡部。氷帝テニス部の頂点に立ったお前のテニスを見せてやれ!!」 氷帝監督榊太郎(43)あくまで冷静に試合を見ている。 「くらえっ!!『破滅への輪舞曲』!!」 「出たぞ・・・跡部の2段スマッシュ・・・。第1のスマッシュで相手のグリップに・・・。」 「見て!手塚ラケット離してないよ!」 「(いいやグリップにはくらってねえ!一瞬でラケットの面に当てやがった!) ならばガラ空きの右サイドを狙うまでだっ!!・・・・・・・何!?手塚ゾーンだとぉ!?」 強い・・・・今の手塚は全てを超越している・・・。 『ア・・・アドバンテージサーバー!!』 「あと一球・・・」 「(あと一球だ・・・あと一球・・・持ち堪えてくれ!!)」 トスをあげた瞬間。急に顔を歪め手塚は肩を抑えうずくまってしまった・・・。 「「「「て・・手塚ーーーーっ!!」」」」 青学は誰もが手塚のそばに走り寄ろうとした。それを手塚の声が遮る。 「来るなーっ!!戻ってろ!・・・まだ試合は終わっていない。」 「手塚・・・もうヤダ・・・何でこんな事になるのよ・・・・。」 「・・・泣いちゃダメだよ。つらいのは・・・一番辛いのは手塚なんだから。」 「周助・・・・・・。」 は今の一瞬の出来事で目に溜まっていた涙が一気にあふれ出てきてしまう・・・。 「手塚っこれ以上のプレイは危険だよ。」 「それにその肩の状態であの跡部に勝利する確率は・・・極めて低い!」 「部長!無理っスよ!!」 手塚は止める声も聞かずスッと立ち上がる。 「手塚!もうムリだよ。テニスできなくなっちゃうじゃん!!」 「大和部長との約束を果たそうとしてるのか?部をまとめて全国へ導くという・・・がんばれ。」 「青学ぅーーーーっ!!ファイオー−−ッ!」 「あぁ!タカさん!!」 河村も戻ってきて手塚は少し微笑むとゆっくりとコートへ戻って行く。 「俺に勝っといて負けんな。」 「俺は負けない。」 リョーマは手塚にそう言い残すと桃を連れてアップしに行った。 「待たせたな跡部・・・決着をつけようぜ。」 『ゲーム6−6!!12ポインツタイブレーク!!跡部トゥサーブ!!』 手塚は跡部のサーブをリターンエースで返すが、肩が上がらないので逆に2本連取される。 「やっぱり・・・あの肩じゃサーブはムリだよ。」 「サービスで主導権を握れないのはシングルスにとってどれ程痛いことか・・・。」 「もしレシーブ時しかポイントが取れないのならこのタイブレークはかなり不利だ。」 「相当辛いよね手塚・・・(普段クールな君の顔がその激痛のすさまじさを物語っている!)」 同じ頃、跡部も手塚に対して今までとは違う念を抱いていた。 「(俺は・・・俺は思い違いをしていた様だ。手塚・・・貴様はもっと冷静で思慮深い 奴だと思っていた。まさかこんな姿の・・・・こんな熱い貴様の姿を見る事になるとは 思わなかった。こんな極限の状態でこれ程高度な試合を出来る選手が一体何人 いるだろう・・・貴様にこんながむしゃらさがあるなんて誰が想像しただろう。 手塚が青学に懸ける想いを俺は読み切れなかった!この試合、間違いなく 俺にとって無二のものとなる!だから俺も最高の力を一球一球に込めよう・・・ たとえこのタイブレークがどれ程続いたとしても!!)」 どれくらい時間が過ぎただろう・・・先程まで泣いていたがぽつりと呟く。 「この試合いつまでも・・・見ていたいな・・・。」 そして手塚のラケットヘッドが3.2ミリ下がる。 「戻らない・・・・!?」 リョーマにだけ違った映像が見えていたが現実はボールが戻らず拾われてしまう。 「!」 手塚はバックハンドでボールを打った・・・・・。 『ゲームセットウォンバイ氷帝学園跡部!!ゲームカウント7−6!!』 決着の時。勝利の女神は氷帝に微笑み、補欠同士の試合までもつれ込む事となった。 BACK NEXT |