第30章 最後の三種の返し球


『ザ・ベスト・オブ・1セットマッチ青学サービスプレイ』

「う〜周助がんばれ〜〜。」

試合のコールがかかった。が、不二は妙なサーブの構えをしている。

「何だあのサーブは!?」

会場がざわめきだち不二の打ったボールは何とアンダーサーブだった。

「バカめあれで意表をついたつもりか!?」

「いけーーーっジローさん!!」

ジローはアンダーサーブを難なく打とうとしたが・・・・・スカッと空振りしてしまう。

「その打球消えるよ。消えた?」

「マジマジすっげーーーっ今の見た?」

対戦者のジローは腕をブンブン振り回して氷帝ベンチに近づいて行った。

「言ったろ?ジロー。寝てたのか?」

「ジロー先輩起きちゃいましたね。」

「あーあ。賑やかになっちまうぜ。」

不二の消えるサーブを見ても何だかまだ余裕の色が見える氷帝サイド。

「(何だよ、あのアンダーサーブ。ここだ、手元で・・・・!)マジマジすげーな!」

「何てキレのいいカットサーブだ。」

「あれって確実に入れるためじゃなくて決めるためのアンダーサーブなんだね。」

あんなサーブを初めて見たは感心しながら不二を見ています。

「マジすっげぇーよっし返すぜもう一丁っ!!いぇい!!」

「キミキミ・・・・もうコートチェンジだよ。」

「あれ?ハ・・・ハズカC・・・・。」

ジローのボケにも不二は顔色1つ変えずにいる。

「それじゃ今度はこっちの攻めいくぜっ!!」

「(サーブ&ボレーかい。それなら!)」

「マジっ足元に・・・・・・!?のわっ。」

ポーンポーンポーン・・・・・ボールはジロー側ではなく不二サイドにある。

「あれ?どうしたんだろう。まぐれに当たったのかな??」

「・・・さん。奴のボレーを甘く見てちゃダメっスよ。」

「?」

は裕太の説明にわけがわからず首をかしげている。

「すっげーなアイツ。うっかり前に出られねーや。」

「・・・・・・・・・」

不二はまた前に出てきたジローの足元にボールを落とす。

「うわぁっ」

「(彼は狙って打ってる!)」

不二が気づいた時にはポト・・・・・・・と自分のコートにボールが転がっている。

「何て奴だ。手首のスナップだけで自由にボレーをコントロールしている。」

「すごい・・・・だいじょうぶかなぁ・・・・・周助・・・・。」

先輩、心配する事なさそうっスよ。ほら。」

ベンチに座っているリョーマが指差した方向を見ると・・・・不二も天才的にボールを
コントロールし、ジローをベースラインに足止めしている。







『ゲームスカウント2−1!チェンジコート!』

「まだまだだね。」

「サンキュー。」

リョーマの挑発にもいつもの笑顔でにこやかにドリンクボトルを受け取る不二。

「不二の実力はこの程度ではない。」

「え!?手塚。どういう事?」

「見ていればわかる。」

「?」

「へへっ。こんなワクワク試合跡部以来だC〜。んあっ!!」

タタタタッ。サービスを打つと同時にジローはネット前にダッシュした。

「まずい!サービスゲームは容赦無しに前に出てこられるぞ!不二っ!気をつけろ!」

「!」

不二の打ったボールはジローの足が地面から離れる一瞬の隙をついてバウンドする。

「アイツ・・・遊んでやがる・・・・。」

跡部もそう感心するほどの天才技。すると不二は何を思ったのかベンチの方へ向いた。

「ねえ越前。つばめ返しと羆落としは見た事あるよね。これから見せるのが三種の返し球最後の一つ・・・・・白鯨。」

「え?周助の三種の返し球の最後って・・・・。」

「まだ誰も見た事がないはずだけど…。」

ヒュウウウ・・・ヒュウウウ・・・・少し風が出てきたようだ。

「お願いしまーす。」

一瞬驚いたリョーマだが、ニヤッと笑って不二を見た。

「ハハ・・・すげーの上だよオメェ・・・次は何が出てくるんだろーコェーッ!
(でも・・・・・絶対サービスはキープっしょ!!)い゛いっ!なんつって。」

「また懲りずにサービスダッシュ!?」

「でも、さっきよりもネットにつくのが早い!」

「周助!油断しちゃダメよー!」

シュパァ!そうキレのいい音を立てて不二は普通に見えるスライスショットを打った。

「あー打球がホップしちゃった!むー。周助らしくない。」

ジローもアウトだろうと踏んでボールを見送る。

「・・・・・・・!」

「ジロー!!」

跡部がジローの名を呼んだ瞬間、ホップした打球は真下に落ち・・・・

「も・・・・・戻って・・・・!?」

「これが白鯨・・・・三種の返し球の3つ目・・・・。」

はあまりにもすごい打球である白鯨に口があんぐりと開いてしまっている。

「さぁ、もう一球行こうか。・・・・・・風の止まないうちに。」







「乾、今のどうなったの?」

「バックの超スライスでホップした打球がロブのように上昇した後そのまま真下へ落下。
急激なバックスピンが掛かったボールは地面に触れた瞬間に自陣コートまで戻って来た。」

「この風を・・・・・・・逆風を利用したんだ・・・・。すげーよ・・・。」

「えっこんな程度の風で・・・?周助・・・本当すごすぎ。」

さらなる勢いをつけた不二は相手にポイントを取る隙を与えず着々と試合を進めていく。

「青学!青学!青学!」

「行け行けー!周助もっと行けー!」

「なんか目がキラキラしてない?」

「だって、周助すごいんだもん。超カッコいいじゃん。」

「・・・・・・・・・・・。」

のセリフに少しうなだれる青学レギュラー陣。

「裕太くん!やっぱり周助ってすごいよね!」

「そうっスね。やっぱり俺の最終目標は兄貴っスよ。」

「そうだよね!」

がニッコリと裕太に笑いかけると同時に勝利のコールが響き渡った。





『ゲームセットウォンバイ青学不二!!ゲームカウント6−1!!』





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