第28章 あくなきこだわり


「一球入・・・魂!!」

ドン!!!!!

「何あれ!?全然見えなかった。英二見えた?」

「まぁ見えたけど・・・・あれは速いかも。」

青学一勝で迎えたダブルス1。初っ端から長太郎のサーブで会場内が大いに沸いている。

「2人とも触れる事すらできないなんてな。」

『ゲーム氷帝1−0』

「ありゃりゃ。あっという間にゲームが終わっちゃったよ。」

「あ、でもほら。」

「え?あ、あんなに下がってるって事は・・・・。」

第2ゲーム乾のサーブ。1ポイント目から後ろに下がって待つ海堂。

「何だ?何であいつあんな後ろまで下がってるんだ?」

場内をも混乱させる海堂の行動は青学陣にとっては何の変哲もない事だった。

「よっしゃー!行けー薫ちゃん!!」

、女の子がよっしゃーはないでしょ・・・・。」

惜しくもダブルスコートだったが相手の意表をつくには充分だった。

「すげぇブーメラン。一段とキレが良くなってるじゃん!」

「薫ちゃんカッコイー。」

青学だって負けてはいない。海堂のブーメランで応援がさらに盛り上がる。

、ちょっとこれ預かっててくれるか?」

「え?」

乾が達の所へ近づきはめていたリストバンドを渡した。

「うぎゃ・・・何これ・・・・すごい重さ・・・・。」

「凄いな乾・・・あれが特訓メニューの成果。手塚との試合の時には温存してたみたいだね。」

「そのようだな。」

「この重さアンクルぐらいありそう・・・・腕なんかにつけられないや・・・・。」

乾のサーブ・・・超高速サーブも相手の意表をついた。

「イエーイ!いいぞー乾ー!」

「この試合はサーブ対決になりそうだね♪」

「あ、長太郎が当てたよー。」

「あんなゆるいボールならへっちゃらだって。」

「あ、でも宍戸が!!」

「な!?」

宍戸は乾のボールに瞬時に追いつきあっという間にライジングショットを決めた。

「何あれ!?瞬間移動!?あ、しかもまた当ててきてるし!!」

すかさず長太郎がネットへ向かい壁を作るようだ。

「よっし!そこだ!スネイクだー!!」

もうさっきから叫びっぱなしのである。

『アドバンテージレシーバー』

「あー、もうあっという間に追い越されちゃったよ〜。」

「最初のサービスゲームをブレイクされるのはきついね。」

「うー。がんばれ〜〜!!」

『ゲーム氷帝2−0!!』

「あのライジングでのカウンターはやっかいだね。」

「ちょっとリョーマー。悠長にそんな事言って〜。2ゲームも連取されてるんだよ?」

「さぁ?だいじょぶっスよ。あの2人なら。」

「え〜。」

「でも確かに強いな。理想的なダブルスコンビだろう。」

「大石も〜。そんな事言ったらダメよ!元気よく!」

ちゃん元気よくは関係ないって・・・・。」

コートでは海堂がキレはじめたようだ・・・。

「ケッ気に入らねぇぜ。俺はもう好き勝手に動かさせてもらう。」

「海堂!!」

「これ以上ナメられてたまるか。」

「あー、やばい。薫ちゃんがキレた・・・・。」







『ゲーム氷帝3−0!!』

「海堂無茶のしすぎだっ!1人でがむしゃらにプレイして・・・・勝てる相手じゃない。」

「あー。もう本当がんばって。」

は手をぎゅっと組んで祈っている。

『ゲーム氷帝4−0!!』

「海堂だっけか?悪いが精神力や執念にゃ限界があんだよ!」

宍戸に言われるが海堂は何も言わない。それほど疲れているのか・・・

15-0 30-0 40-0 ゲーム・・・・サーブ4発だけであっという間に0−5。

「残念だったな乾。海堂はもう終わりだ!」

「おい海堂お前終わってるそうだが?」

乾は宍戸の野次にニヤッと笑って海堂に言った。

「データ取れたんスか?」

「あぁ。バッチリな。ご苦労さん。」







「・・・・データ?」

「気づいてた?」

「ついたついた。だって乾ブツブツ言ってたし。」

「何皆気づいてたのー?教えてくれればよかったのにー。」

「でも・・・・あと1ゲーム取られたら終わりなのは同じだよ。」

しかし乾のデータはすごかった。

「ショートクロスの確率85%・・・・。」

「さっすが乾ー。」

「やっと乾先輩らしくなってきましたね。」

「そだねん。」

『ゲーム青学1−5!!』

『ゲーム青学2−5!!』

『ゲーム青学3−5!!』

「すごーい。あっという間に・・・3ゲーム連取だ!」

「でも・・・次は鳳のサーブだ…。」

「あ・・・・。」

しかし乾のデータはスカッドサーブをも上回る。3回連続ダブルフォルトで0-40。

「あ、やっぱ入った!?」

「でも返したっ!」

そして絶好球・・・海堂のブーメランがシングルスコートに入った。

「やったー!完成だ!」

「だめだ!シングルスコートまで戻ってきたが故にアイツが追いつけてしまう!」

「でもチャンスボールだ!行けー乾ー!!」

今度は鳳が乾のデータの裏をかいたが・・・・・・・

『ゲーム青学4−5!!』

「よっし。あともうちょ・・・・あれ?」

乾が審判台に来てこう言った。

「さっきの自分のスマッシュ5.3mmほど出てましたよね。残念ながらアウトです。確認して下さい!」

「えぇー。そんなぁー。」

「ちぇバカ乾ー。マジメな奴ー。」

「でも・・・惜しかったね。」

自分のテニスに最後まで拘ったバカ正直者とあえてシングルスコートにブーメランを
叩き込む事に拘ったバカ者・・・・今回は勝利という二文字はおあずけ。





『ゲームセットウォンバイ氷帝宍戸・鳳ペアゲームカウント6−3!!』





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