第４７章　勝利への執着

『これより関東大会決勝シングルス２の試合を行います！！』 「アクシデントがあったとはいえ不動峰の橘を倒した実力…おそらく不二と同等…いや、それ以上だろう…。」 「周助…。」 『ザ・ベスト・オブ1セットマッチ切原サービスプレイ！！』 「さあチャッチャッと行きます…よっ！！」 超攻撃型の赤也のテニスにカウンター攻撃が得意の不二。だが… 「おい…攻めているのは……不二だ！！」 「(バカな！コイツ…！？)」 コーナーを狙い、ロブを上げさせた不二はスマッシュの構えを見せる。 「(ヒ、ヒザか！？)」 咄嗟に膝を庇う赤也に不二は冷たい視線を向ける。 「キミか。やはり越前のヒザ……。」 「潰す…。」 そのスマッシュが赤也の心に火をつけ…目も充血していく。 「周助！気をつけて！！」 「？？」 赤めになると攻撃力もパワーも格段に上がり…プレーもラフになっていく。 「デ、データを…。」 「乾！？ちゃんと休んどかないとダメだってば！」 「今まで決して取らせてもらえなかった不二のデータ…今取らないと。」 乾の言う通り、今まで不二は決して人に本気を見せた事がない…。 というよりも不二は勝負の勝ち負けに執着できないでいたのだった…。 『ゲーム不二２−０！！』 「(…手塚キミもボクと同じ人種だと思っていたよ。あの試合を… 勝ちに執着キミを見るまでは。でもやっとわかったよ…。)」 チラッと不二は河村が振っている青学の校旗を見上げた。 「(ボクも……本気になれるかな…)」 「隙見ぃーーーーっけ！」 不二の一瞬の心境の変化の隙を見て赤也は容赦なく不二に向かってスマッシュした。 「周助！！」 「！」 不二は何事もなかったようにゆっくりと起き上がった。 「…！(み…見えない…！？)」 「アイツわざとお前の体を狙ったな。」 竜崎から渡されたボールを手探りで受け取る不二。 「不二お前まさか……………。」 「周助！！」 も不二の変化に気づいたのか身を乗り出して不二に声をかける。 「…大丈夫だから。この試合だけは絶対引くわけにはいかないんだ…。」 「周助…。」 赤也に気づかれてはいけない。にはただただ祈る事しかできなかった。 『ゲーム切原４−３！！』 「見えないのによくやるねぇ。」 赤也のリードで迎えた8ゲーム目。その一言でギャラリーがざわつき始める。 「何っ！？サーブを返した！？」 「マグレっすよ！！」 リターンをし、ラリーに応じ始めた不二。 「凄い…これが不二の本当の力…。」 「あんな事…可能なんすか？」 「今の不二は…手塚をも凌ぐ！！」 『ゲーム不二５−４！！』 「クソッ…(俺にはもう…勝利しかねーんだよ！！)うらぁ！」 わざとラケットを地面に擦り、不二にボールの気配を悟られないようにする赤也。 「(何て精神力の強さだ…切原赤也。これあが勝ちへの執着心…。 キミに勝てるとボクはもっと上に行けるかもしれない…。)」 『ゲーム不二６−５！！』 「(全国は楽しそうだね)」 「(あんな想いもう二度としねぇ)」 「「だから勝つのは…ボクだ(俺だ)」」 不二のマッチポイントを迎え…赤也に変化が訪れた。 「(ちくしょう……限界を超えるんじゃねーのか俺はよう！？)」 「あ…ひぐま落とし！？」 そして次々に繰り出される…赤也の技ではない必殺技の数々。 「ま、まさか赤也……たどり着いたと言うのか…無我の境地！！」 「あの時の…リョーマと一緒だ…。」 そして赤也は…グラウンドスマッシュの構えを見せる。 「(負けるもんか！優勝するのは…)青学だ！！」 「不二っ無茶するな！」 「でも返せた！」 だが、赤也はもう一度同じ構えを見せるが…不二のガットには穴が…！ 「「返せる確率2％…」」 「不二先輩っフレームだっ！！」 「！(ありがとう…越前)」 フレームに当て、強引に返すが赤也の動きの方が速かった。 だが、その手にラケットは握られていなかった…。 「…暴走しすぎたか。お前の握力ではそれはまだ扱えまい。」 『ゲームセットウォンバイ不二７−５！！』 BACK　　 NEXT