AG６１.５

頂上決戦へ

「越前の記憶戻りそうです！」

リョーマをアップさせに行った桃が走って決勝のコートまで戻ってきた。

「ホント？」
「はい！時間稼ぎありがとうございました！」

その言葉に青学サイドからは喜びのどよめき、立海サイドからは驚きのどよめきが上がる。
一番驚いているのは黄金ペアと戦っているジャッカル・丸井ペア。

「…今の今まで時間稼ぎかよ。」
「どーりでおかしいと思ったぜ。何とかしろよ、ジャッカル。」
「俺のせいかよ。」
「…いーや。とりあえず時間稼ぎなんてナメた事言いやがったの後悔させてやろーぜ。」
「おう！」

自在にシンクロを操れるようになった黄金ペアに死角はない。
立海にリードされていたのを逆転し、勝利を収める。

『ゲームセット！ウォンバイ大石・菊丸ペア！』

「よっしゃー！これで全国ナンバー１だ！」
「あぁ。ありがとう、英二。」
「それはこっちのセリフだしー。あとは。」
「…そうだな。越前が帰ってくるのを待つだけだ。」
「んじゃそれまでにホメてもーらおーっと！」
「英二…コリャ大変。」

英二はそのままの所まで走って行って手を差し出す。

「英二？」
「俺勝ったよ。だからホメて！」
「子供みたい(笑)おめでとう、英二。」

差し出された手とそのままハイタッチ。

「さっきトリオがちょっとだけ戻ってきてくれたんだけど、ライバルの皆が助けてくれてるんだって。」
「ライバル？」
「そう。今までリョーマと対戦した人たちにトリオが声かけに行ったんだって。」
「マジで。やるじゃんあいつら。」
「ねー。来年も再来年も青学はだいじょぶそうだね♪」
「…それはそれでなーんかつまんないけどー。」

後輩を可愛がってる英二だからこそちょっとむくれてみる。
だけどその頼もしい後輩たちが最後の試合のために頑張ってくれている。

『それではS1の試合を始めます。両校選手は前へ。』

「…コールがかかった…。」
「あとちょっとなんじゃないの？」
「越前…。」

幸村はまだコートに入ってはいない。
だけども審判が時計を見て、早く準備をするように無言で促している。

「コシマエなら多分おしっこちゃうん？なーなー立海の大将さん。ワイと勝負せーへんか？」
「金太郎くん？！」

青学の後ろから飛び出してきたのは四天宝寺の金太郎。
いつの間に来たんであろう白石もちゃっかりの隣にいる。

「1球ぐらいやろーやー！」
「いいよ。やろうか。」
「ホンマか？おおきにおおきに！」

金太郎のお蔭でリョーマにはまだ時間ができた。
だが、一瞬の喜びもつかの間。

青学は神の子の恐ろしさを目の当たりにするのだった。

BACK