試合前のひと時 |
「…何話してるんだろ…。」 準決勝のスコアつけに向かう途中、は手塚と千歳が会話している所にでくわした。 「天衣無縫の極みに一番近かつはうちの金太郎ばい。」 「話はそれだけか。」 草陰に隠れていたに会話は少ししか聞こえて来ない。 「天衣無縫の極み…って何だろ…。」 「覗きなんて趣味悪かね。」 「わっ!」 急に頭の上から声がかかったと思って見上げるとそこにはさっきまで手塚と話していた千歳の顔。 「さっきの話どっから聞いていたと?」 「ホントに今。何の事言ってるかわからなかったし。」 「ふーん。」 千歳はニヤつきながらを見ている。 「あなた試合ない」 「千歳。」 「は?」 「俺は四天宝寺の千歳千里。」 いきなり自己紹介されは目を丸くするが、コホンと咳払いして疑問をぶつける。 「千歳くん」 「呼び捨てでよかとよ。」 「…はいはい。千歳、あなた試合は?四天宝寺って勝ち進んだんでしょ?」 「まぁ色々あっと。」 「……。」 答えをはぐらかされたはさらに追求しようとするが仕事が待っている。 「…テニス楽しい?」 「何ね、いきなり。」 「今ふと思ったんだもん。じゃあ私仕事あるから…。」 はくるっと後ろを向き歩き出そうとするが千歳に腕を掴まれる。 「…何?」 「今度俺と一緒にテニスせん?」 「……考えとく♪」 ニッコリ笑ってはスタスタと歩き出すのだった。 「………。」 「兄ちゃん!」 「わっ!何ね、みゆきか…。」 「今の女の人誰?ナンパでも失敗したと?」 「…お前、実の兄をそういう目で見るんじゃなかとよ…。」 「?」 首をかしげる妹みゆきの頭をポンポンと叩いて千歳はみゆきと共に準決勝のコートへ向かうのだった。 コートにつくとブン太がベンチから手を振る。 「あ!だ〜!」 「…そっか。こっちの準決勝は立海なんだね。」 「…何だよガッカリしやがって。」 「仕事だもん。公私混同しません。」 キッパリ言うをじーーーっと見つめる男。 「………えっと…私の顔何かついてる?仁王くん。」 「いんや。可愛えの〜と思ってな。」 「ありがと?」 「!!」 も仁王と視線を合わせるとブン太が慌てての顔を自分に向けさせる。 「ど、どしたの?ブンちゃん。」 「仁王と10秒目を合わせると妊娠すっから気をつけろよ。」 「……ぷっ。あはははは。そんなわけないでしょ〜。仁王くん仁王くん。」 爆笑するは仁王を手招きして自分の目の前に立ってもらう。 「1、2、3、4、5、6、7、8、9、10!」 「…。」 が10数えている間仁王は楽しそうな悪巧みを考えてそうな笑みを浮かべている。 「………?」 「…うっ。」 がパッと口を押さえるとブン太は青ざめ仁王も一瞬目を見開く。 「何てなるわけないじゃーん。」 「!マジで驚かすなよ!」 「ゴメンゴメン。ペテン師もちょっと騙せたかな?」 「…ピヨ」 にニッコリと微笑まれ仁王は罰が悪そうに目をそらす。 「さん、そろそろ試合だからうちの部員返してもらっていいかな?」 「……幸村くんにもありそうだね。」 「何が?」 「10秒目が合うと…むぐ」 「〜頼むからそれ以上は言うな。」 の言葉を遮ってブン太が両手での口をふさぐ。 「ぷはっ。もー。ブンちゃん苦しいってば。」 「……お前はホント大物だな。」 「そこがさんのいい所だよね?」 「ありがとー。」 「…いや褒められてないぜよ。」 和やかムードの試合前。はまだ知らない… その瞬間に立ち会う事を… 悪魔の誕生の瞬間を目の当たりにする事を……… BACK |