負けることの許されない王者


『ゲームセットウォンバイ青学・乾7−6!!』

「やったー!乾が勝った!乾が勝った!」

「乾ぃーっ!!」

「うぐっ」

英二と桃がフェンスを飛び越えて乾に飛びついた。

「乾先輩やってくれたぜ!汁だけの男じゃなかったんスね!!」

「・・・・、何してるの?」

自分の横でフェンスに足をかけて登ろうとしているに不二が声をかけた。

「え、私も英二達みたいに乾に飛びつく。」

「ダメ、危ないから。」

「えーー。」

はしょげて残念そうに登ろうとかけていた足を降ろした。

はマネージャーだからコートに入っちゃ・・・って聞いてないね。」

「乾ー!エライエライ!超すごい!お疲れー!!」

結局は乾がベンチに戻ってきた所で抱きついて次々と賞賛の言葉を浴びせる。

「ヒヤヒヤさせやがって。お前なら必ずやってくれると信じてたよ。」

「海堂に粘りや精神力を学んだんでね。」

「・・・・・。」

首の皮一枚で繋がった青学。喜ぶのはまだ早い。残り2勝しなくては・・・・


そして立海ベンチでは柳と真田が向かい合い何やら険悪ムード。

「どうやら立海の部長は今日手術を受けるらしい。」

「・・・・・立海の部長?あのベンチに座ってる人は?」

が頭にはてなマークを浮かべてベンチにいる真田を指さす。

、あんな老けて見えててもあの人は副部長なんだよ。」

「え、そうなの!?てっきり部長かと・・・・・。」

「不二・・・老けてるとか言ったら失礼だってば…。」

でも実際に中学3年生に見えないのは誰もが認める事ですけどね。

「手術に間に合わせるように試合を早く終わらせたかったけど・・・。」

「乾がそうはさせなかったんだね。」

「しかし立海は戦力が衰えるどころかそれ以上に勝ちにこだわり始めた様だ。」

「負ける事の許されない王者立海の掟・・・。」

不二の言葉を聞いての脳裏には先日の事件が浮かんできた。



「負けてはならんのだ!たとえ草試合だろうとそれが立海大附属だ!!」



王者立海の掟。負けた者には容赦ない制裁が待っている。

「勝てない試合じゃなかった。私情を挟み過ぎたな。」

「・・・精市との約束を無にしてしまった。やってくれ!他の部員に示しがつかない。」

真田が手を振り上げ柳の頬を叩こうとしたその時・・・!

「!」

「何だ・・・赤也?」

「別にいーじゃないっスか?結果的に立海が全国3連覇すりゃ。」

赤也の言葉を聞きながら不二もジャージを脱いで準備に入った。

「13分台で終わらせりゃあ幸村部長の手術間に合いますって!!」

「切原君だっけ?急いでるのなら協力するよ。」

切原に背を向け、淡々としゃべる不二。

「周助・・・・・・。」

、そんな顔しないで。ちゃんと応援してて?」

「・・・アイツには気をつけて。」

少しの間忘れていた出来事がまた蘇ってきて恐怖に駆られてしまう。

「大丈夫だよ。だからしっかり見ててね。」

「・・・うん。」

不二は優しくの頭をなでて赤也の方に向き直り静かに目を開く。

「協力してくれるなら話は早いっス。チャッチャッと終わらせましょ。」

「但し・・・キミが勝つとは限らないよ。」

「なる程、そー言う事ね!」





天才・不二とエース・赤也。両者が己の限界を超える戦いの火蓋が今・・・切られる。





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